【Vol.042】【1級建築士・施工】山留工事を完全攻略|工法・支保工・地盤障害を一挙整理
建築士試験サポ塾 / 施工 第6回
① 山留工事とは
山留工事(山止め工事)とは、根切り工事で地盤を掘削する際に、周囲の土が崩壊しないよう支える工事です。敷地が狭く切り勾配が取れない場合や、地盤が軟弱で崩落リスクがある場合に実施します。地盤の性状・周辺環境・予算を総合的に勘案して工法を選定します。
② 山留壁の種類
(1)ソイルセメント柱列山留め壁
現地の土とセメントを混合して造るソイルセメントの柱の列で構成する山留め壁。H 形鋼の芯材を所定間隔で挿入して剛性を高めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 騒音・振動 | 鋼矢板打ち込みと比べて小さい |
| 止水性・合成性 | 比較的優れている |
| 施工上の注意 | ローム層を含む場合は入念に現地盤土とセメント系混和材の撹拌を行う |
| 活用方法 | 山留め壁の応力材を利用し、地下外壁・床スラブと一体化した合成壁として地下外壁の薄型化が可能 |
(2)親杭横矢板工法
H 形鋼の親杭を所定間隔で打設し、その間に横矢板(杉板)を上から順に落とし込んで壁を構成する工法。施工しやすく広く使用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 止水性 | 隙間があるため止水性は期待できない |
| 硬質地盤への適用 | 硬い親杭を打ち込むため硬質地盤にも施工可能 |
| 横矢板の設置 | 地盤を緩めないよう根切り後に速やかに設置。裏込め剤を十分充填し、くさびを打つ |
| 埋込み式設置時 | 受動抵抗を発揮させるため根入れ部分は打ち込み・圧入もしくはセメントベントナイト液の注入を実施。杭周りの空隙も充填する |
(3)鋼矢板(シートパイル)工法
波形断面の鋼矢板を連続して打ち込み山留め壁とする工法。継手部分で相互にかみ合わせて壁を形成します。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 適した地盤 | 軟弱地盤・地下水位の高い地盤・透水性の大きい砂盤 |
| 不適な地盤 | 転石・砂礫など硬質地盤(貫入不能) |
| 欠点 | 打ち込み時の騒音・振動、継手部分の強度問題、腐食しやすい |
③ 支保工の種類
(1)水平切り張り支保工
山留め壁が倒れないよう鉄骨の切り張りを水平方向に設置して支える工法。試験で最も頻出の支保工です。腹起こし・切り張り・火打ち・切り張り支柱などの用語を確実に押さえましょう。
| 部材名 | 説明 |
|---|---|
| 腹起こし | 山留め壁に取り付く水平部材。鉄骨でも鉄筋コンクリートでも可 |
| 切り張り | 腹起こし間を水平に突っ張る部材。X・Y 両方向に設置 |
| 火打ち | 腹起こし隅部に設ける斜め部材 |
| 切り張り支柱 | 切り張りを下から支える縦部材 |
ポイント②:切り張りの継手はできる限り交差部付近に設ける。
ポイント③:腹起こしの継手は火打ちと切り張りの間または引張力の小さい位置に設ける。
ポイント④:切り張りはできる限り直線的(X・Y 方向に 90° 交差)に設置する。
軸力計(圧力計)の設置
根切り期間中および躯体構築期間には、切り張りに作用する軸力を軸力計(圧力計)で1 日 3 回(朝・昼・晩)測定します。
軸力計は切り張りの段ごとかつX・Y 方向に各 1 箇所ずつ設けます。
| 火打ちの有無 | 設置位置 |
|---|---|
| 火打ちを使用しない場合 | 腹起こしと切り張りの交差付近 |
| 火打ちを使用する場合 | 火打ち材の部分(交差部ではなく火打ち材箇所) |
(2)地盤アンカー工法
山留め壁背面の地盤中にアースアンカーを設けて山留め壁を引張力で支える工法。掘削内部に切り張りがないため作業空間が広く確保できます。掘削面積が大きい場合や偏土圧が作用する場合に有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 引き抜き耐力の確認 | 全数について設計アンカー力の 1.1 倍以上であることを確認 |
| 余長の確保 | 仮設地盤アンカーの引張材は 1.5 m 程度の余長を確保して切断し所定本数を束ねる |
| 定着部の処理 | 注入材との付着を高めるため汚れ・油を除去しスペーサーを装着 |
④ 掘削工法の種類
| 工法 | 概要・適用条件 |
|---|---|
| 法付けオープンカット | 敷地に余裕がある場合に安全な勾配の法面を設けて根切り。山留め壁不要でコスト低減 |
| アイランド工法 | 法面を残して中央部を先行掘削・先行躯体を構築し、その躯体に切り張りをかけて外周部を仕上げる。中央部は切り張り不要で作業性良好 |
| トレンチカット工法 | 外周部を溝状(トレンチ)に先行掘削し外周躯体を先行構築、その後中央部を掘削。地山状態が悪い場合や掘削が深く広い場合に適する |
| 逆打ち工法 | 山留め壁設置後に 1 階床スラブを構築し、そのスラブを切り張り代わりとして上下同時施工を進める。地上躯体と地下躯体を同時施工でき工期短縮に有効 |
⑤ 山留め工事で生じる地盤障害
(1)ヒービング
粘性土地盤で生じる現象。山留め壁背面の土が内側へ回り込み、掘削底面が押し上げられる現象です。
| 対策 |
|---|
| 山留め壁の根入れを深くする |
| 地盤改良により地盤強度を高める |
| 山留め壁背面地盤の一部を掘削して高低差を小さくする |
(2)ボイリング
砂質土地盤(透水性の高い地盤)で生じる現象。地下水が山留め壁下部を回り込み、水と砂が掘削底面から沸き上がる現象です。河川・海岸付近で特に発生しやすい。
| 対策 |
|---|
| 山留め壁の根入れを深くする |
| 山留め壁先端付近を薬液注入などで地盤改良し不透水層を形成する |
| ディープウェル工法・ウェルポイント工法で背面地下水位を低下させる |
(3)盤ぶくれ
地盤の種類によらず生じる現象。被圧帯水層の水圧によって掘削底面が押し上げられる現象です。
メカニズム:難透水層の下に被圧帯水層が存在し、根切りが進むと難透水層が薄くなり、被圧水圧に土の重量が負けて底面が盤状に隆起します。
| 対策 |
|---|
| 止水性のある山留め壁を被圧帯水層まで根入れし被圧水を遮断する |
| 山留め壁の根入れを深くする |
| 難透水層を地盤改良し厚さを増大させる |
| ディープウェル等で地下水位を低下させる |
・ヒービング → 粘性土(背面土の回り込み)
・ボイリング → 砂質土(地下水と砂が沸き上がる)
・盤ぶくれ → 被圧帯水層の水圧(地盤種類によらず)
✅ 実力チェック|○×問題
各問題が正しければ○、誤りであれば×で答えてください。