建築士試験サポ塾 / 施工 第14回 / Vol.050
【Vol.050】【1級建築士・施工】プレキャストコンクリート工事を完全攻略|製造工程から接合まで数値で押さえる
プレキャスト鉄筋コンクリート(PCA)は、1級建築士「施工」科目で毎年1問は必ず出題される頻出テーマです。本記事では、サポ塾・施工第14回の講義内容をもとに、製造工程・品質基準・かぶり厚さ・許容差・接合方法など、試験に直結するポイントをすべて網羅します。数値の暗記だけでなく「なぜその値なのか」を理解することで、応用問題にも対応できる力を身につけましょう。
📋 目次
- PCAとは何か
- 製造工程の流れ
- 部材コンクリートの品質基準
- 最小かぶり厚さ(試験頻出)
- 脱型強度・製品検査の許容差
- 現場施工:仮置き・組み立て・精度検査
- 接合方法(ドライ/ウェット)
- 重点コンクリートの品質
- 接合部の防水
- 実力チェック ○×問題
1. PCAとは何か
プレキャスト鉄筋コンクリートは略して PCA と記します。よく混同される「プレストレストコンクリート(PC)」とはスモールAの有無で区別されます。
製造は原則として認定を受けたプレキャスト工場で行い、部材を現場に運搬して組み立てるのが一般的です。ただし大規模現場では、現場内に仮設工場を設けて製造することもあります。その場合は第三者機関の認定取得が望ましいとされます。
2. 製造工程の流れ
製造工程は以下の順序で進みます。
| 順 | 工程 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 型枠組み立て | 型枠に離型剤を塗布 |
| ② | 配筋・仕口金物取付 | アーク溶接による鉄筋溶接は材質に悪影響→禁止 |
| ③ | 打込み前検査 | 鉄筋・本数・間隔・かぶり厚さを目視で全数実施(抜取りではない) |
| ④ | コンクリート打込み | 養生ベッドによる単層一打ち式が一般的。棒形振動機で入念に締め固め |
| ⑤ | 前養生 | 約3時間放置(加熱しない)。ホットコンクリート使用で短縮可 |
| ⑥ | 表面仕上げ | 前養生後に実施 |
| ⑦ | 加熱養生(本養生) | 温度上昇勾配は1時間あたり10〜20°C。蒸気停止後は自然冷却で緩やかに冷ます |
| ⑧ | 後養生 | 貯蔵中も十分な散水養生を実施。表面温度が高い部材は外気温と同程度になるまで水密シートで養生 |
| ⑨ | 脱型 | 所要強度以上を確認。有害なひび割れ・破損が生じないよう実施 |
| ⑩ | 製品検査 | 全数検査。不合格品は廃棄・作り直し |
3. 部材コンクリートの品質基準
PCAのコンクリートは通常の現場打ちコンクリートと数値が異なります。比較して覚えましょう。
| 項目 | PCA部材コンクリート | 普通コンクリート(参考) |
|---|---|---|
| 品質基準強度 | 21〜60 N/mm² | 設計に応じる |
| 水セメント比 | 55% 以下 | 65% 以下 |
| 単位セメント量 | 300 kg/m³ 以上 | 270 kg/m³ |
| 空気量(特記なし) | 3% 以下 | 4.5%(±1.5%) |
| スランプ | 12 cm 以下 | 設計に応じる |
| 塩化物量 | 0.3 kg/m³ 以下 | 0.3 kg/m³ 以下 |
脱型強度の確認方法
脱型時の圧縮強度の確認は、部材の製造場所で採取した供試体を使用し、部材コンクリートと同一の養生条件(前養生・加熱養生・後養生)で行います。「標準養生」ではありません。
強度の種類の整理
- 設計基準強度:構造計算に用いる圧縮強度
- 耐久設計基準強度:計画供用期間に応じた耐久性確保のための強度
- 品質基準強度:上記2つの大きい方
- 調合管理強度:品質基準強度+構造体強度補正値
PCAの管理では「品質基準強度」が基準となります(現場打ちコンクリートの「調合管理強度」と混同しないこと)。
4. 最小かぶり厚さ(試験頻出)
PCAのかぶり厚さは鉄筋コンクリートの数値と混同しやすいため、比較・連想で覚えましょう。計画供用期間「標準・長期」の場合の最小かぶり厚さを示します。
| 部材の種類 | 屋外 | 屋内 |
|---|---|---|
| 耐力壁・柱・梁 | 40 mm | 30 mm |
| 床スラブ・屋根スラブ | 30 mm | 20 mm |
| 非耐力壁 | 30 mm | 20 mm |
・屋外→屋内は −10 mm
・耐力壁・柱・梁→床・屋根スラブは −10 mm
・耐久性上有効な仕上げがある場合はさらに −10 mm 可
・設計かぶり厚さ = 最小かぶり厚さ + 5 mm(通常RC造は+10mmだがPCAは+5mm)
5. 脱型強度・製品検査の許容差
脱型時の所要強度(鉄板問題!)
| 脱型方法 | 必要圧縮強度 |
|---|---|
| ベッドを傾斜させずに(寝かせたまま)起こす | 12 N/mm² 程度 |
| ベッドを70°〜80°傾斜させてから吊り上げる | 8〜10 N/mm² |
製品寸法の許容差
| 項目 | 許容差 |
|---|---|
| 対角線の長さ(耐力壁パネル) | ±10 mm |
| 対角線の長さ(その他の部材) | ±5 mm |
| 部材の長さ(梁・大梁) | ±10 mm |
| 部材の長さ(柱・壁・床・屋根スラブ) | ±5 mm |
| 部材の高さ・幅(垂直方向) | ±5 mm |
| 部材の厚さ | ±3 mm |
ひび割れの補修基準
| ひび割れ幅 | 補修方法 |
|---|---|
| 0.1 mm 以下 | 清掃→プライマー塗布→初期補修用プレミックスポリマーセメントペーストで表面処理 |
| 0.1 mm超〜0.3 mm 以下 | Vカットなしでそのままエポキシ樹脂注入 |
| 0.3 mm 以上(主筋方向に部材全体) | 補修不可・廃棄(構造耐力上重要な壁・梁・床スラブ等) |
6. 現場施工:仮置き・組み立て・精度検査
受け入れ検査と仮置き
現場到着時は製造工場の検査済み表示を確認し、目視で異状の有無を確認します。できればトラック・トレーラーから直接吊り上げるのが望ましいですが、仮置きが必要な場合は以下のルールを守ります。
| 部材種類 | 積み重ね段数 | 枕木 |
|---|---|---|
| 床・壁スラブ | 6段以下 | 1枚ごとに設置 |
| 柱・梁部材 | 2段まで | 1枚ごとに設置 |
バルコニー付き床部材の大引き位置
バルコニー付き床・ひさし付きの板状部材は、組み立て後に部材が支持される位置(カンチ部より内側)に大引きを配置します。支持点から離してはいけません(離すと曲げモーメントが大きくなる)。
組み立て・仮固定・精度検査の手順
組み立ては作業責任者を定め、その指示に従います。斜めサポートを壁は2本以上、柱はXY方向に各1本以上設けて仮固定します。精度検査は1部材を仮固定するたびに(全数完了後ではなく)次の部材の組み立て前に実施します。
組み立て精度検査の判定基準
| 検査項目 | 許容差 |
|---|---|
| 縦込め位置(水平方向) | ±5 mm |
| 天場の高さ(垂直方向) | ±5 mm |
敷きモルタル(グラウト)
耐力壁の水平接合部に使用する敷きモルタルは、壁厚と同じ幅でレベル調整材より10 mm高く敷き込みます。立て込み後にはみ出した部分はカットします。敷きモルタルの圧縮強度は材齢28日において部材コンクリートの品質基準強度以上とします(設計基準強度でも調合管理強度でもない)。
現場打ちコンクリートとの接合部位置の許容差
プレキャスト部材を現場打ちコンクリートに接合する場合、PCA部材の位置の許容差は現場打ちコンクリートと同じく±20 mmです(製作寸法の±3〜10 mmとは別の話です)。
7. 接合方法(ドライ/ウェット)
| 種類 | 接合方法の例 |
|---|---|
| ドライジョイント | 溶接接合・スリーブ継手・高力ボルト接合 |
| ウェットジョイント | 鉄筋を溶接またはループ状に重ねてコンクリートを充填 |
エンクローズ溶接
- 溶接後の冷却による約1 mm の収縮が生じるため、同一部位の溶接は連続して行う
- 作業は中央から外側へ進める(外周部から中央部は誤り)
- 気温が −5°C 未満の場合は溶接禁止
- −5°C〜+5°C の場合は溶接範囲を加熱してから実施
スリーブ継手
接合用鉄筋に鋼製スリーブをはめ込み、セメント系無収縮グラウト剤を充填して鉄筋を一体化する方法。鉄筋の収縮なし・残留応力なし。
- グラウト材は柱部材のコーナー側スリーブから連続的に注入
- 充填確認は全ての排出口から溢れ出たことを目視で確認
8. 重点コンクリートの品質
| 項目 | 重点コンクリート | 部材コンクリート |
|---|---|---|
| 水セメント比 | 55% 以下 | 55% 以下 |
| 単位水量 | 185 kg/m³ | − |
| 単位セメント量 | 330 kg/m³ 以上 | 300 kg/m³ 以上 |
| スランプ | 21 cm 以下 | 12 cm 以下 |
9. 接合部の防水
- 外壁目地部分のシーリング材の充填深さ:10 mm 以上(15 mm でも可)
- 液状シールによる目地の防水:塗り幅は目地幅プラス両端とも60 mm 以上
- 塗り厚さ:防水用ガラスシートを含め10 mm 以上
✅ 実力チェック|○×問題
各問題が正しければ○、誤りであれば×で答えてください。
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