【Vol.040】【1級建築士・計画】市庁舎・避難所等を完全攻略|コミュニティ施設から空港まで試験頻出ポイントを総整理
建築士試験サポ塾 | 計画科目 第16回 | Vol.040
市庁舎の床面積比率、仮設住宅の種類と期間、マンホールトイレの設置基準、空港の駐機方式——これらはすべて試験で繰り返し問われる頻出テーマです。この記事では講義動画の内容をもとに、数値・用語・建物実例を一気に整理します。復習タイムで扱った美術館・図書館の要点も後半にまとめています。
1. 市庁舎(本庁舎)の計画ポイント
床面積の比率
市庁舎全体に占める主要部門の床面積比率は、窓口事務部門と議会関連部門がそれぞれ10%程度とされています。残り90%は衛生・住宅・教育・国際交流など多様な部門が占めます。
試験ポイント:窓口部門 ≒ 10%、議会関連 ≒ 10%、合計でも全体の20%程度に過ぎない点を押さえましょう。
エントランスの区分
市庁舎では以下の3種類のエントランスを計画する必要があります。
| エントランス種別 |
対象者・用途 |
| メインエントランス |
市民が日常的に利用する主出入口。窓口部門に近接した分かりやすい場所に配置 |
| 職員用エントランス |
職員サービス専用 |
| 議会用エントランス |
行政部門とは別に独立した出入口を確保 |
市町村庁舎を訪れる人の70〜80%は窓口部門の利用者であるため、メインエントランスはエントランスホールに接した分かりやすい場所とします。
議場の配置
議場は行政部門とは別組織の大空間が必要となります。一般に最上階または別棟に配置することが望ましいとされています。吹き抜けを持つ大空間になるケースが多いです。
市庁舎の建物実例
| 建物名 |
所在地 |
設計・特徴 |
| 名護市庁舎 |
沖縄県 |
象設計集団。SRC造3階建。ダブルグリッド方式、壁をほとんど使用せず自然通風による屋内環境確保。南側ファサードにひさしが並ぶ |
| 下諏訪町文化センター(かの市民館) |
長野県 |
積極的な市民参加による構想策定・プロポーザル設計。大ホール・美術館・図書館を含む複合施設。茅野駅直結 |
| 住田町役場 |
岩手県 |
凸レンズ型に組まれたトラスが並ぶ屋根架構が特徴。基本構想から市民主導で計画・運営 |
| 目黒区役所本庁舎 |
東京都 |
村野藤吾設計。旧生命保険会社本社ビルを転用。外部・内部デザインを継承しつつ3階エントランスを各種イベント対応に改修 |
| 大田区役所本庁舎 |
東京都 |
村野藤吾設計。蒲田駅近くの民間テナントビルを耐震補強・設備改修・バリアフリー化して庁舎転用 |
| 石巻市庁舎 |
宮城県 |
百貨店を転用。既存エスカレーターをそのまま活用。旧売り場を窓口スペースへ、旧映画館を議場へ改修 |
混同注意:目黒区役所と大田区役所は「村野藤吾設計・既存ビルを改修転用」という共通点があります。セットで覚えておきましょう。
2. コミュニティ施設の計画ポイント
コミュニティ施設に関しては常識的に判断できる問題が多いですが、次の原則が試験に頻出します。
| 計画の原則 |
内容 |
| 複合化による管理一元化 |
類似施設を集めて複合化した場合は建築物・資料・備品などを管理一元化し有効利用を図ることが望ましい |
| 多目的広場 |
ロビーの一部を予約なしで利用できる多目的広場とすることが望ましい |
| 住民参加 |
初期段階から住民を交えて計画を進めることが有効 |
| 夜間利用のセキュリティ |
スタッフ配置が不十分なケースを想定し、夜間専用出入口・専用カードキーなどのセキュリティに配慮した計画とする |
コミュニティ・コンベンション施設の建物実例
| 建物名 |
所在地 |
主な特徴 |
| 愛知県児童総合センター |
愛知県 |
仙田満+環境デザイン研究室。「チャレンジタワー」と呼ぶ吹き抜け空間を中心にアトリウムを取り囲むように探索・体験コーナーを配置 |
| 東京国際展示場(東京ビッグサイト) |
東京都 |
9m角の4本の巨大柱によるスーパーストラクチャーで支えられた「コングレスタワー」。最上部平面約90m×90m。外装はチタンパネル |
| ビッグパレットふくしま |
福島県 |
多目的展示場と国際会議場からなる複合コンベンション施設。楕円形の「マザールーフ」と呼ばれる大屋根が特徴 |
| パシフィコ横浜 |
神奈川県 |
港未来21地区の複合コンベンション施設。大屋根を支えるサスペンションアーチ構造はヨットのキールをイメージ |
| 沖縄コンベンションセンター |
沖縄県 |
パーゴラのある中央広場を囲むように劇場棟・展示棟・会議棟を配置。屋根は「大空に羽ばたく大鳥」をイメージ |
| 日本コンベンションセンター(幕張メッセ) |
千葉県 |
第1期は「山波をイメージ」。第2期は屋根形状が凹面から尖り面へ波のように変化。スカイラインに特徴あり |
| 群馬県農業技術センター |
群馬県 |
小断面の正三角形を組み合わせた屋根架構を持つ建築物 |
| アオーレ長岡 |
新潟県 |
駅前の市民交流拠点。大通りに開かれた屋根付広場を中心にアリーナ・市民交流スペース・市役所・議会を配置した複合施設 |
3. 避難所・仮設住宅・防災拠点の計画ポイント
応急仮設住宅の種類
| 種別 |
内容 |
| 借上げ型仮設住宅(みなし仮設住宅) |
地方自治体が民間賃貸住宅を借り上げて提供。東日本大震災以降「みなし仮設住宅」とも呼ばれる |
| 建設型仮設住宅 |
災害発生の日から20日以内に着工。供用できる期間は完成の日から2年以内(建基法85条)。恒久的に使用されるものではない |
建設型仮設住宅の数値を確実に:着工は20日以内、供用期間は2年以内。この2点は試験で直接問われます。
指定緊急避難場所
災害が発生した場合または発生するおそれがある場合に危険から逃れるための避難場所です。洪水等に係るものについては、想定される洪水の水位以上の高さに避難スペースを配置する必要があります。
小学校を避難所として使用する場合の計画
| 計画のポイント |
内容 |
| プールの活用 |
屋外プールの水を手押し式ポンプでトイレ洗浄水などに利用できるよう計画することが望ましい |
| 機能の区画分離 |
教育活動を早期再開するため、避難所機能と教育機能の区画・動線を分けることが望ましい |
| 備蓄倉庫 |
行政の防災担当部局などと協議し、想定される災害に対して安全な場所に計画することが望ましい |
災害用トイレ
マンホールトイレ:下水道管路にあるマンホールの上に簡易便座・目隠しパネルを設け、災害時に迅速にトイレ機能を確保するもの。
設置の目安:避難者50〜100人に1基
配置場所:居住エリアに近く、かつ一目につきやすい場所(離れすぎると不便・危険)
数値の誤りに注意:マンホールトイレの目安は50〜100人に1基です。「200人に1基」は誤り。また「全てマンホールトイレとする」「一目につきにくい場所に設置する」も誤りです。
備蓄倉庫(高層集合住宅)
高層集合住宅に設ける備蓄倉庫は、いずれの住戸からも4層以内に配置することが望ましいとされています。また各地方公共団体の条例では10戸×0.1㎡以上かつ1箇所1㎡以上などと規定されることもあります。
防災拠点・災害拠点病院
| 項目 |
内容 |
| 屋外バルコニー |
仮設修復足場や落下ガラス防護のため、建築物外周にバルコニーを設けることは有効 |
| 沿岸型災害拠点建築物(浸水深5m想定) |
1・2階外壁をガラスカーテンウォールとして津波時に破壊・脱落させ、4階以上の重要機能を守る計画とすることは有効 |
| 基幹災害拠点病院 |
全施設が地震等に対して安全な構造を有すること、敷地内にヘリポートを有すること等が求められる |
| 防災集団移転促進事業 |
災害危険区域のうち居住に適当でない区域の住居について、住民の集団的移転を促進することを目的とした事業 |
災害復興住宅の建物実例
| 建物名 |
特徴 |
| 間のふれあい住宅(兵庫県) |
阪神・淡路大震災の被災者を対象に建設された高齢者向け棟+一般向け棟で構成。サポート拠点を併設した災害公営住宅 |
| グループハウス尼崎(兵庫県) |
阪神・淡路大震災の復興事業として建設。入居者は被災者および高齢者に限定。高齢者が集まって生活する新しい居住形態 |
| みんなの家(岩手県) |
東日本大震災の津波で流された杉の丸太を使用。被災した人々のよりどころとして作られた集会場 |
| 摂南大学(大阪府) |
工場跡地において官民が連携し、防災公園と一体化して計画された施設 |
間のふれあい住宅とグループハウス尼崎の違い:両者とも阪神・淡路大震災の復興建物ですが、グループハウス尼崎は入居者が「被災者および高齢者に限定」されており、一般向け棟はありません。「グループ」の方は特定のグループ(被災者・高齢者)向けと覚えましょう。
4. 空港旅客ターミナルの駐機方式
空港旅客ターミナルビルの駐機方式は発着機数と旅客数によって異なります。代表的な4種類を整理します。
| 方式 |
概要 |
実例 |
| フロンタル方式 |
ターミナルビル前面に航空機を縦列で駐機させる方式。小規模空港で採用されることが多い |
小規模空港全般 |
| フィンガー方式 |
ターミナルビルから指(フィンガー)のように伸びたピア部分の周りに航空機を駐機させる方式 |
関西国際空港など |
| サテライト方式 |
メインターミナルビル周辺に衛星のように副ターミナルビルを置き、その周囲に駐機させる方式。双方のビル間は地下道などで連絡 |
パリ・ドゴール空港など |
| オープンエプロン方式 |
ターミナルビルから離れたエプロンに駐機を集中させ、大型バスなどで連絡する方式 |
ワシントン・ダレス空港など |
5. 復習タイム:美術館の重要数値
展示室の計画数値
| 項目 |
数値・内容 |
| 展示室の面積比率 |
建物全体の3〜5割 |
| 企画展示室の平面寸法 |
長辺は短辺の1.5〜2倍、面積は100〜300㎡程度 |
| 鑑賞距離(大型展示物) |
6m以上離れることが望ましい。通路幅2mを加えると部屋幅は8m以上 |
| 鑑賞限界 |
展示壁面の長さ400mが1回の鑑賞限界 |
| 展示室天井高(人工照明) |
最低3.5m、最高6m |
| 展示室天井高(自然採光) |
10m程度も必要 |
美術館の照度基準
| 展示物の種類 |
推奨照度 |
| 日本画 |
150〜300 lx |
| 洋画 |
300〜750 lx |
| 石・金属の彫刻 |
1,000 lx |
| 木・紙の彫刻 |
350〜750 lx 程度 |
著名建物実例(美術館・博物館)
| 建物名 |
設計者・特徴 |
| 水戸芸術館 |
磯崎新。コンサートホール・劇場・美術ギャラリーが独立性を保ちながら共通エントランスホールを持つ文化複合施設。コンサートホールは変形6角形 |
| 金沢21世紀美術館 |
SANAA(妹島和世+西沢立衛)。表裏のない円形建物。エントランスが4方向に4つ。外壁はガラス |
| キンベル美術館 |
ルイス・カーン。かまぼこ型のコンクリートのヴォールト屋根。屋根頂部のトップライトから自然光が反射し間接照明として館内を照らす |
| グッゲンハイム美術館(NY) |
フランク・ロイド・ライト。螺旋スロープの展示室。エレベーターで最上階に上がってから自然に下へ導かれる構成 |
| グッゲンハイム美術館(ビルバオ) |
フランク・ゲーリー。スペイン。流動的な形態。展示空間が中央アトリウムを描くように配置 |
| ポーラ美術館 |
極力景観を損なわないよう建築物をほぼ地下に埋め込み高さを抑える。アトリウムで自然光を取り入れる |
必ず覚えたい:「キンベル美術館=かまぼこ型=ルイス・カーン」。語呂合わせ:「キン(金)でベル(鐘)が鳴る→カーン→かまぼこ」。過去問でも出題されています。
6. 復習タイム:図書館の重要数値
| 項目 |
数値・内容 |
| 閲覧スペースの比率 |
建物全体の3〜5割 |
| 1閲覧室の席数 |
100〜150席程度 |
| 1席あたりの閲覧面積(個室なし) |
2〜3㎡ |
| 閲覧机の寸法(1人あたり) |
幅90cm×奥行き60cm程度 |
| 書架の通路幅(車いす使用者対応) |
120cm以上(書架幅45cmを加えた芯々寸法は165cm) |
書庫の収納冊数(床面積あたり)
| 書庫の方式 |
収納冊数(/㎡) |
| 単独書架式・開架式 |
約170冊 |
| 単独書架式・閉架式 |
約230冊 |
| 可動密集書架式 |
約400冊 |
覚え方:170 + 230 = 400 という関係で整理すると覚えやすいです。
著名建物実例(図書館)
| 建物名 |
設計者・特徴 |
| 国立国会図書館関西館 |
京都府。全体の3/5以上を占める書庫と閲覧室を地下に設置。職員動線と利用者動線を明確に分離 |
| 金沢市玉川図書館 |
谷口吉郎(父)。大きなガラスの採光部を持つ本館と煉瓦造のタバコ工場を改修した古文書館の2棟からなる |
| みんなの森 ぎふメディアコスモス |
伊東豊雄。特徴的な屋根を持つ複合施設構成 |
| 国立子ども図書館 |
安藤忠雄。日本唯一の国立の児童書専門図書館。アーチ棟は専門図書館・書庫、レンガ棟は大人・子どもともに利用可 |
| フランス国立図書館 |
ドミニク・ペロー。緑豊かな中庭を持つロの字型。4隅にL字型の塔状タワーを配置 |
| ストックホルム市立図書館 |
円筒体が組み合わさった外観。巨大な円筒の内部は壁面に沿って書架、中央にサービスデスク |
| 新アレクサンドリア図書館 |
傾斜した巨大な円盤の屋根構造。外壁に世界各地・各時代の文字が彫り込まれている |
一問一答チェック(12問)
グループハウス尼崎は、阪神・淡路大震災後に建設された高齢者向け棟と一般向け棟で構成されサポート拠点を併設した災害公営住宅である。
▶ 答えを見る
×
→ グループハウス尼崎に一般向け棟はない。入居者は被災者および高齢者に限られる。一般向け棟があるのは「間のふれあい住宅」。
災害時の避難所に設けるトイレはすべてマンホールトイレとし、避難者200人あたり1基を目安とする。
▶ 答えを見る
×
→ すべてマンホールトイレとする必要はなく、人数の基準も誤り。正しくは避難者50〜100人につき1基。
マンホールトイレは居住エリアから離れた一目につきにくい場所に設置することが望ましい。
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×
→ 正しくは「居住エリアに近く、一目につきやすい場所」。遠すぎると不便かつ危険。
建設型仮設住宅は、災害発生の日から20日以内に着工し、供用できる期間は完成の日から2年以内である。
▶ 答えを見る
○
→ 正しい。建基法85条の規定。恒久的に使用されるものではない。
市庁舎において、窓口事務部門および議会関連部門の床面積はそれぞれ全体の10%程度である。
▶ 答えを見る
○
→ 正しい。市町村庁舎を訪れる人の70〜80%は窓口部門の利用者。
石巻市庁舎は百貨店を転用したもので、既存エスカレーターをそのまま活用し、旧売り場を窓口スペースに、旧映画館を議場に改修している。
▶ 答えを見る
キンベル美術館は、かまぼこ型のヴォールト屋根の頂部から自然光を取り入れ、反射させて間接照明として館内を照らしている。設計者はルイス・カーンである。
▶ 答えを見る
○
→ 正しい。「キンベル=かまぼこ=ルイス・カーン」は必須の組み合わせ。
高層集合住宅の備蓄倉庫は、いずれの住戸からも6層以内に配置することが望ましい。
▶ 答えを見る
空港旅客ターミナルビルのフィンガー方式は、ターミナルビルから指のように伸びたピア部分の周りに航空機を駐機させる方式である。
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○
→ 正しい。関西国際空港などで採用。サテライト方式(副ターミナルを衛星状に配置)と混同しないこと。
図書館の書庫において可動密集書架式の収納冊数は、床面積1㎡あたり約230冊である。
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×
→ 可動密集書架式は約400冊/㎡。約230冊/㎡は閉架式の単独書架式。
小学校を指定避難所として使用する場合、避難所機能と教育機能の区画・動線を分けて計画することが望ましい。
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○
→ 正しい。教育活動の早期再開のために機能分離が求められる。
グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)はフランク・ロイド・ライト設計で、螺旋スロープの展示室を持ち、エレベーターで最上階に上がってから作品を鑑賞しながら自然に下へ導かれる構成である。
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○
→ 正しい。ビルバオのグッゲンハイム(フランク・ゲーリー設計)と設計者・特徴を混同しないこと。
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